サージカルマスクの選び方・使い方
Ⅰ. サージカルマスクの役割
 サージカルマスクは、着用者が血液・体液由来の病原体飛沫に曝露するリスクを低減します。また、着用者の呼気中に含まれ排出される微生物から周囲の人を守ります。
 米国では、食品医薬品局(FDA:Food & Drug Administration)が定めている医療機器クラス1又はクラス2で規定されているマスクのことをいいます1。 日本での国家検定は行われていませんが、いくつかの製品は米国の検定に合格しているものもあります。

サージカルマスクの性能を示す指標2

細菌ろ過効率
(BFE:Bacterial Filtration Efficiency)>98%

マスクによって細菌を含む4 ~ 5 μ m の粒子が除去された割合をパーセントで表し、着用者の咳やくしゃみの飛沫遮断性を示します。

微粒子ろ過効率 (PFE:Particle Filtration Efficiency)>98%
 0.1μm のポリスチレン製ラテックス微粒子をマ スクに負荷し捕集された程度を測定し、マスクが 直径1μm 未満の粒子をろ過できる性能を表します。

液体防護性(ASTM F1862)
 人工血液透過によるサージカルマスクの抵抗性標準試験法。
 マスクの基布に対して、血圧に相当する80, 120,160 mmHg の圧力をかけた場合の人工血液の透過性を試験します。合格した圧力を記載します。
 手術中、カテーテル検査、麻酔、透析の抜管時など、血管からマスクに直接血液が飛散するような場面を想定して作られた規格です。


Ⅱ. サージカルマスクが必要な臨床場面
  • 患者呼吸器分泌物、血液・体液が飛散し、医療従事者の鼻口腔粘膜がこれに曝露するリスクがあるときに着用します。
  • 清潔操作を要する処置を行う際に、医療従事者が口や鼻に保菌している感染性病原体に患者が曝露しないために着用します。
  • 飛沫予防策を行う患者病室の入室前に着用します。
  • 咳・くしゃみ・鼻水のあるときの咳エチケットとして使用します。

病棟でのサージカルマスク適応場面例[○は使用を推奨]
 適用場面  着用の有無
 ベッドバス  通常は不要
 車いすへの移乗介助  通常は不要
 下痢患者の失禁ケア  〇
 バイタルサイン測定  通常は不要
 全面介助口腔ケア  〇
 排泄介助  通常は不要
 リネン交換  通常は不要
 体位交換  通常は不要
 気管内吸引  〇
 創部の洗浄  〇
 創傷処置(飛散無)  通常は不要
 創傷処置(飛散有)  〇
 輸液準備・交換  通常は不要
 化学療法剤の準備  〇
 導尿  通常は不要
 採血  通常は不要
 吐物・汚物処理  〇


Ⅲ. サージカルマスクの選び方
  • BFE 値(>98%)、PFE 値(>98%)、液体防護性は基本となる指標。メーカーの記載を確認します。
  • 着用時の快適性(ヒトパッチテストの実施の有無)。
  • 含有されてはならない素材の証明(ガラス繊維・ゴム部のラテックスなど)。
  • メーカーからの安定供給を受けることができるか。
  • 呼吸のしやすさ(吸気抵抗:⊿(デルタ)P 数字が低いほど呼吸がしやすい)。
 ⊿ P 吸気抵  感覚
> 5 とても熱く呼吸が苦しい
4.0~5.0 熱く呼吸が苦しい
3.0~4.0 熱く感じる
2.0~3.0 快適
< 2 とても快適

Ⅳ. 指導のポイント
  • なぜサージカルマスクを着用する必要があるのかを指導しましょう。
  • 正しいサージカルマスクの着用方法、タイミングを指導しましょう。
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手術室で使用するサージカルマスクの着脱方法
手術に使用するサージカルマスクは、長時間着用していても耳が痛くならない、顔面への密着性が高い、術野への落 下防止などの点からひもタイプが適しています。
※ゴム製の耳かけタイプのサージカルマスクの着脱方法については、個人用防護具(PPE)の着脱の手順を参照してください。

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文献
  • FDA : Guidance for Industry and FDA Staff ‑ Surgical Masks – Premarket Notification Submissions; Guidance for Industry and FDA 〈http://www.fda.gov/ MedicalDevices/ DeviceR egulationandGuidance/GuidanceDocuments/ucm072549.htm〉
  • ASTM: F2100‑07 Standard Specification for Performance of Materials Used in Health‑Care Settings, 2005
 
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