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全国サーベイランス(JES2009)結果

血液・体液曝露事例の全国サーベイランス結果

多施設共同参加によるエピネット日本版B(Episys109B)を用いた血液・体液を介する皮膚・粘膜曝露事例の全国サーベイランス結果

調査の概要

【目的】血液媒介病原体は創のある皮膚や粘膜を介して感染することが知られています。我が国における血液・体液を介する皮膚・粘膜曝露の実態について、定型書式(エピネット日本版B)を用いたサーベイランスを実施している多施設の協力を得て、報告曝露事例を調査しました。
【方法】職業感染制御研究会エピネット日本版サーベイランスワーキンググループ(JESWG、ジェスウオグ)により、2009 年7 月に全国エイズ拠点病院377施設に郵送でJES への参加を依頼しました。JES への参加表明は116 施設で、エピネット日本版B(皮膚・粘膜曝露用、解析ソフトEpisysB105 ~ 109 による)データは46 施設(うち解析は34 施設)が提供しました。
【主な結果】過去5 年間の皮膚・粘膜曝露事例は916件(2004 年4 月1 日~ 2009 年3 月31 日)で、職種は看護師51.0%、医師36.4%が多く、発生場所は病室33.5%、手術部20.0%、特殊検査処置室7.5%、集中治療部7.4%、救急部門5.9%、病室5.9% 等でした。曝露した血液・体液は血液が74.0% でした。部位は眼62.2%が大多数を占め、創のない皮膚25.1%、創のある皮膚19.1%、口6.4%等の順でした。防備していない皮膚・粘膜に触れた事例が85.3% でした。多施設調査から重篤な曝露事例の特徴が明らかとなり、標準予防策の重要性が再確認されました。

謝辞:JES2009 に参加いただいた各病院・担当者の皆様に心より感謝申し上げます。

はじめに

血液・体液は無菌的に見えても、さまざまな病原体を含んでいる可能性があります。代表的なものにB型肝炎ウイルス、C型肝炎ウイルス、HIV(ヒト免疫不全ウイルス)などがあります。これらは血液媒介病原体と呼ばれますが、針刺し切創だけでなく、創のある皮膚や粘膜を介して感染することが知られています。
我が国における血液媒介病原体の皮膚・粘膜曝露の実態については個別病院等のデータは公開されていますが、まとまったものは少ないのが現状です。そこでエピネット日本版Bを活用して血液・体液の皮膚・粘膜曝露の実態を明らかにすることで、標準予防策の実施等における重要視点を整理することが可能となります。本報告では2009 年に実施された調査結果を報告します。

方法

①概要

職業感染制御研究会エピネット日本版サーベイランスワーキンググループ(Japan EPINet SurveyWorking Group:JESWG、ジェスウオグ)により、2009 年7 月~ 9 月に全国エイズ拠点病院の377 施設に、郵送でJES への参加と施設調査(JES2009)への参加を依頼しました。JES への参加表明は116 施設(同意書の提出あり)で、エピネット日本版B(皮膚・粘膜曝露、EpisysB105 ~ 109)は46 施設(うち解析したのは34 施設)からデータ提供がありました。過去5 年間の皮膚・粘膜曝露事例は916 件(2004 年4 月1 日~2009 年3 月31 日)が収集され、これらの報告事例における曝露の特徴を分析しました。

②調査方法の詳細

  • 実施組織:職業感染制御研究会エピネット日本版サーベイランスワーキンググループ(JESWG:ジェスウオグ)
  • 倫理審査:JESWG メンバー所属の研究所で倫理委員会(2009 年4 月)
    ※倫理審査関連書類を希望の場合は吉川徹(労働科学研究所国際協力センター)まで連絡
  • 2009 年7 月:全国エイズ拠点病院の377 施設に、郵送でJES への参加と施設調査(JES2009)への参加を依頼
  • 2009 年10 月までにJES への参加表明116 施設(同意書の提出あり)
  • エピネット日本版A(針刺し切創サーベイランス用、解析ソフトEpisysA107 ~ 109、78 施設、 5 年間、13,830 件)
  • エピネット日本版B(皮膚・粘膜曝露サーベイランス用、解析ソフトEpisysB105 ~ 109、46 施設、うちデータなし12 施設、分析34 施設、5 年間、916 件)
  • 分析・公表の手順:2009 年10 月~データクリーニング、11月~分析、1月参加施設へのフィードバック、2010 年2 月成果の公表・評価、4 月職業感染制御研究会ホームページで全国公開
  • 皮膚・粘膜曝露サーベイ:2009年10月~データクリーニング、3 月~分析、2010 年8 月研究会総会で報告、2011 年~参加施設へのフィードバック、2011 年2 月結果公表
  • 分析対象データ
    1. 施設数34施設、エピネット日本版B( EpisysB105~ 109)による針刺し切創データの提供されたもののうち解析可能であったもの
    2. 2004 年4 月1 日~ 2009 年3 月31 日に、対象施設において発生し、各施設においてエピネット日本版B に入力された皮膚・粘膜曝露事例
    3. 対象となったデータは916 件/5 年間、34 施設
  • 分析方法
    1. EpisysB109_01(皮膚・粘膜曝露報告集計・解析ソフト Microsoft Access? 2003) を利用して、34施設、5 年間に記録された916 件をデータベース化し、同ソフトを利用して解析
    2. 1996-2003 年のデータは、平成14 年度厚生労働科学研究班(木村班)、および2003 年に職業感染制御研究会によって実施されたサーベイランスデータベース(1996 年1 月- 2003 年12 月のデータ)の解析に基づく(JESWG担当吉川徹)
    3. 1996-2003 年の針刺し切創サーベイランス結果の概要は「職業感染防止のための安全対策製品カタログ集(第3 版)p8-11 を参照。皮膚・粘膜曝露事例の公開は今回が初

結果

主な結果として、職種は医師333/36.4 %、看護師467/51.0%、検査技師44/4.8%、放射線技師19(2.1%)、医学生12/1.3% 等でした(図1)。発生場所は病室307/33.5%、手術部183/20.0%、特殊検査処置室69/7.5%、集中治療部68/7.4%、救急部門54/5.9%、病室54/5.9% 等の順でした(図2)。曝露した血液・体液の感染性の割合は67%(566/844 件)でした(図3)。図4 には年度別の報告件数の集計を示しました。
曝露した血液・体液( 複数回答) は血液が670/74.0% で最も多く、唾液71/7.8%、痰46/5.1%、羊水25/2.8%、吐物22/2.4% の順でした(図5)。曝露した部位(複数回答)は眼563/62.2% が大多数を占め、無傷な皮膚230/25.1%、傷のある皮膚172/19.1%、口58/6.4%、鼻25/2.8% の順でした(図6)。防備していない皮膚・粘膜に触れた事例が779/85.3% で(図7)、曝露経路は患者から直接に358/39.9%、検体容器からの漏出/こぼれ102/11.4%、 IV チューブ、パック、ポンプから漏れて63/7.0%、栄養チューブその他のチューブが外れて/漏れて50/5.6% と続きました(図9)。図8 には曝露時の防護具の状態を示しました。手袋なしが32%となっています。曝露時間・量・ワクチンの有無について表2 ~表4 に示しました。緊急処置時の曝露は134/15.4%でした(表5)。

図表A

図表B

図表C

謝辞

謝辞:本データを提供に協力をいただいた各病院の皆様に心より感謝申し上げます。
○ JES ネットワーク参加病院(エピネット日本版B のデータ提供※)
市立札幌病院、市立旭川病院、旭川赤十字病院、八戸市立市民病院、東北大学病院、大館市立総合病院、米沢市立病院、福島県立医科大学附属病院、国立病院機構水戸医療センター、埼玉医科大学病院、都立広尾病院、都立駒込病院、杏林大学病院、東京大学医学部附属病院、東京医科歯科大学医学部附属病院、日本医科大学付属病院、社会保険中央総合病院、公社豊島病院、横浜市立大学附属病院、富山大学附属病院、福井大学医学部附属病院、岐阜大学医学部附属病院、独立行政法人国立病院機構静岡医療センター、焼津市立総合病院、独立行政法人国立病院機構名古屋医療センター、名古屋第一赤十字病院、岡崎市民病院、小牧市民病院、愛知医科大学病院、滋賀医科大学附属病院、大阪大学医学部附属病院、大阪医科大学附属病院、りんくう総合医療センター市立泉佐野病院、星ヶ丘厚生年金病院、神戸大学医学部附属病院、和歌山県立医科大学附属病院、国立病院機構岡山医療センター、財団法人倉敷中央病院、広島大学病院、徳島大学病院、愛媛大学医学部附属病院、松山赤十字病院、長崎大学医学部・歯学部附属病院、国立病院機構熊本南病院、大分大学医学部附属病院、沖縄県立中部病院
※エピネット日本版B による皮膚・粘膜ばく露事例(Episys109Bによる)の提供は46 病院。本報告は対象調査期間において解析可能データが得られた34 病院、916 件の分析結果です。