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Ⅰ. 標準予防策

はじめに

現在、すべての医療施設・社会福祉施設において、標準予防策(スタンダードプレコーション)の遵守は最も重要な感染対策となっています[1]。従来、血液媒介感染症でもあるHIV による医療従事者の職業感染症が懸念されたことから、血液および体液はすべて感染性を有するとした普遍的対策(ユニバーサルプレコーション)が提議され、その後、標準予防策として改変されました。
標準予防策は、血液・体液・汗以外の分泌物・排泄物・損傷のある皮膚・粘膜に触れる際は、感染性の病原体を含む可能性を考慮し、手指衛生を行うとともに適切な個人用防護具を着用し、確実な交差感染対策と職業感染対策を行うことを目的としています。
近年では、医療従事者の感染症が患者に伝播するリスクも指摘されていることもあり[2]、より一層の感染対策の遵守および実施が求められています。

手指衛生

医療施設における病原体の伝播は、手指を介する経路が最も重要とされており、手指衛生は感染対策の基本です。交差感染対策としては病原体を殺滅する必要があることから、擦式アルコール製剤による手指衛生が重要となります。血液や体液など目に見える汚れが見られる時には、流水と液体石鹸による手指衛生を行います。
医療施設において手指衛生の遵守が重要であるものの、一般的に我が国および欧米の施設においても遵守率は低いのが現状であり、手指衛生の遵守率向上には、遵守率のモニタリング[3] や研修を行う必要があります。
なお、針刺し切創事例における受傷部位に対する消毒薬の使用や「血液を絞り出す」ことについては、現在のところ、効果的もしくは無効とするいずれも明確な報告はないことから、施設ごとのリスクアセスセントによると考えられます。

呼吸器衛生/ 咳エチケット

2003 年に、世界各国でアウトブレイクが見られたSARS(重症急性呼吸器症候群)において、未知の病原体による医療従事者の多くの感染事例が大きな問題となったことを踏まえ、標準予防策の一部として呼吸器衛生/ 咳エチケットが追加されました。
本対策は、咳などを有する伝播性の呼吸器感染症を介した感染を低減させる目的で、ポスターの掲示を含めた患者・面会者に対する教育・啓発、咳などの呼吸器感染症状を有する受診者は、咳やくしゃみの際には口や鼻を覆い、気道分泌物に手が触れた際には手洗いを行い、医療施設は、手洗い設備やごみ箱などを整備します。咳などの呼吸器感染症状を有する受診者にマスクを着用してもらい、可能であれば、離れた場所に待機させます。医療従事者は、咳などの呼吸器感染症状を有する受診者に対応する際には、マスクを着用するなどの対策を病原体検出前に行うことで、確実な感染対策の実施を行うこととしています。

個人用防護具(personal protective equipment:PPE)

【手袋】
血液や体液を触れる際には、手袋の着用を行います。針刺し切創における感染リスクを減らす効果は明確ではないものの、一定の血液曝露量を減少させることが報告されていることから4、注射針やメスなど鋭利物を取り扱う際においても手袋の着用が必要です。
また、処置などにおいて手袋の表面を汚染した病原体は、着脱後の手指からも検出されます[5]。したがって、処置毎に廃棄・交換するとともに、汚染された表面に触れないように手袋を外すなど、適切な着脱および、使用毎における手指衛生が必要です。

【ガウン・エプロン】
標準予防策において、気管・口腔吸引、オムツや尿の処置など、医療従事者の衣類および露出部位が曝露される危険性がある際には、撥水性のディスポーザブルのガウンまたはエプロンを着用します。薬剤耐性菌対策としても有用であることから[6]、接触感染予防策を行う際には、処置の内容に関わらず使用することが推奨されます。
エプロンを用いる際には、露出しているため上腕の汚染を考慮した適切な手洗いが必要です。

【マスク】
マスクは、飛沫予防策におけるサージカルマスク、空気予防策においてはN95 マスクが選択されます。
H1N1 2009(パンデミック)を含むインフルエンザでは、サージカルマスクが用いられます[7],[8]。
SARS の伝播の際に、エアロゾル発生の可能性がある処置が、医療従事者を含めた感染リスクであったことから、H5N1 インフルエンザなど病原性が高く伝播時の危険性が高い病原体による感染症に対しては、気管支鏡・気管内挿管・気管内吸引などのエアロゾル産生性の処置を行う際には、N95 マスクの着用が推奨されます。


【ゴーグル・フェイスシールド付きマスク】
目への曝露は感染が成立するリスクがあることから[9]、血液が飛散する状況においては、ゴーグルやフェイスシールド付きマスクの着用が必要です。特に、観血的な手術の際には、微量な血液も含め顔面に曝露されていることが報告されており[10]、適切な着用が必要です。

職業感染防止のための医療スタッフの防護(PPEの使用)

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