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ゴーグル・フェイスシールドの選び方・使い方

Ⅰ.ゴーグル・フェイスシールドの役割

湿性生体物質の飛沫が飛散する場合に、それに含まれる病原体による曝露から結膜を防護します。 ゴーグルは眼部の防護には有効ですが、顔面の他の部位への跳ね返りや飛び散りに対する防護能はありません。対してフェイスシールドは、 その形状によって眼部に加えて、同時に鼻腔、口腔粘膜を同時に防護し、あるいは側頭面への跳ね返りや飛び散りを減少させます。

Ⅱ. 眼の防護が必要な臨床場面

1)飛沫粒子が広範囲に飛散する可能性が大きい場合●手術時(マイクロ手術以外) ●創部洗浄 ●口腔処置・ケア時 ●気管内吸引(開放式) ●気管内視鏡 ●気管内挿管 および抜管時
2)医療器具操作時に内容物が飛び出したり、跳ね返ったりして曝露される可能性がある場合●加圧下での血液含有装置の操作時 ●血管穿刺( 透析・アンギオなど) ●大量の液体状、泥状の湿性ディスポ吸引器の処理時 ●検体容器の取扱い時 ●静脈チューブ・バッグ類・ポンプ取扱い時 ●栄養・ベンチレーターチューブの取扱い時

Ⅲ.ゴーグル・フェイスシールドの選び方

用途に適した防護機能やコストパフォーマンスが必要ですが、装着の遵守率に関しては、装着感、業務に必要な視野確保、顔面にフィットするよう調節可能なものに加えてデザイン性などが影響します。種類と特徴を表1 にまとめました。

種類と特徴

(規格はJIST8147:2003「保護めがね」参照 http://www.jisc.go.jp/app/JPS/JPSO0020.html)

表1. 眼の防護具の種類と特徴
種 類 防護能力 利 点 欠 点
単回使用型 A. フィルム交換保護めがねtype-a 下方・側面からの汚染を受けやすい 軽量、通気性がよい
安価、汚染時に交換しやすい
固定が弱く着用中の行動が制限される
B. フェイスシールド付サージカルマスクtype-b 顔全体を覆うため、A より防護能力は高い 着脱が簡便 シールドが曇りやすい
重量がありずれやすい
C. フェイスシールドタイプtype-c 下方からの汚染をうけやすい 通気性がよい。
めがねをつけていても使いやすい
歯科診療以外は、より安価でマスクもついているB で代用
再生使用型 D. 保護めがねタイプtype-d 下方、側面からの汚染に弱い 装着感に優れている
通気性がよく曇りにくい
Fより固定が弱い
E. ゴーグルタイプtype-e 粘膜全体を完全に密閉できる 固定が強固 曇りやすい。視野が狭くなる
重く装着感に劣る
F. フェイスシールドタイプ
type-f
シールドの形により、比較的側方や下方からの汚染を受けにくい 通気性がよい
めがねをつけていても使いやすい
歯科診療時以外の臨床場面では、見た目に大げさになる印象がある。

Ⅳ. 指導のポイント

(可能な限り、自施設の事例を挙げることが有用です。)

1)なぜ結膜の保護が必要なのか、曝露リスクに関して実例を交えて説明します。
 米国、イタリアのデータでは、粘膜曝露の半数強は患者への直接接触によるもので、ほとんどは、医療従事者が適切な個人用防護具(PPE)を着用していれば防ぎ得たものであったとの報告があります。もっとも多いのは眼(結膜)への曝露ですが、他の身体部分に比べて非常に印象的であるため、報告のバイヤスによる影響も考えられます。しかし、イタリアのSIROH-EPINet データでは、眼への曝露が報告された結膜曝露のうち85%のケースが眼の防護具を着用していませんでした。これらの事例の40%近くは、血液または他の体液の飛沫が予想でき、(外科手術、分娩、救急治療、心配蘇生、剖検)、防止可能でしたが、このうち2例は報告された結膜曝露後にHIV職業感染が確認されました4。
 日本でも、2002年大阪府の病院でHCV感染乳がん患者の手術で助手を務めた際、患者血液の飛沫が眼に入った20代の女性外科医(曝露時は感染防止用のゴーグルは未着用)が、C型肝炎ウイルスに感染し、翌年出産した赤ちゃんへの母子感染もウイルスの遺伝子型が手術患者のものと一致して、確認されたことがわかったという事例があります。

2)サンプルを十分用意して個人の顔面に合う製品を選択します。
 米国のEPINet データでは、眼の血液曝露の報告例の25%が、曝露時にゴーグルまたはフェイスシールドを着用しており、その中には、防護用メガネが滑り落ちたケースや、眼の上部に密着させるシール(頭皮や額に血液がついた後で血液が眼の中に流れ落ちるのを防ぐためのもの)がないことが多いことがわかりました。
 特にゴーグルで十分な視野を得るために、室温の違いによるグラス部分の曇り状況も確認する必要があります。
 各種眼の防護具の特徴を確認して、自身の顔面の形にフィットすることと、予想される曝露の状況、同時に使用される他の個人用防護具、個人の視力の必要性よって選択することが重要です(表1参照)。

3)正しい着脱について実際に製品を扱います。
 個人用メガネ、コンタクトレンズは防護具とはなりません。 特に個人用メガネは顔面に密着しているものではないため、形状によっては顔面との隙間から血液・体液の飛散を浴びることになりかねません。そして、血液曝露が予想される処置時には事前に医療スタッフ同士で装着の有無および装着状態の点検・指導を行うことが望ましいでしょう。
 一般に防護具を脱ぐ順序は、手袋→ゴーグルやフェイスシールド→ガウン→マスク、です。眼の防護具に限らずPPE全般にいえることですが、PPEの適切な着脱を行い、汚染を広げて新たな感染伝播を起こすことのないよう注意します。
 また脱ぐタイミングとして、特に、手術の場合には、手袋やその他の汚染物を取り除く時に、血液が結膜に飛散する危険性があるため、眼部保護具やマスクは手術が完全に終了するまで装着していなければなりません。

4)施設で採用されている製品でトレーニングします。
 眼の防護具に関しては、先に述べたように、その装着感、業務に必要な視野確保、顔面へのフィット性が大きく影響するため、机上の概念演習だけでなく自施設で実際に使用しているPPEを手にとって、その特徴を知り、扱いに慣れることは重要です。

Ⅴ.ゴーグル・フェイスシールドの管理

単回使用型は使用後、感染性廃棄物として処理する。再生使用型は、次の2つの方法がある。

  • 使用後医療用洗浄剤による洗浄。特に血液・体液による汚染が強い場合は、洗浄後消毒用アルコールや次亜塩素酸で消毒する。
  • 使用後、ウォッシャーディスインフェクターで熱水消毒をする。
一部の消毒薬や熱水消毒に適さないものもあるので、メーカーの推奨に従う。
また、使用前のゴーグル・フェイスシールドは、環境による汚染がないように適切なケースや引き出しに保管する。

着脱方法について


装着時のポイント

(1)PPEを装着前に手指衛生(手洗いや擦式アルコール消毒剤の擦り込み)を行います。
(2)着用するときは、眼部(ゴーグル類)および顔面(フェイスシールド)を覆い、フィットするように調整します。
(3)フレームやバンドの部分でゆるみのないように固定したうえで、フィット調整します。


脱ぐときのポイント

(1)外すときには、ゴーグルは耳の部分、フェイスシールドはヘッドバンドの部分をつかみます。
(2)防護具の外面、特に前面は汚染しているので触れないようにしてください。
(3)PPEを脱いだ後は、手指衛生を行います。


文献
  1. CDC:Guidance for the Selection and Use of Personal Protective Equipment (PPE) in Healthcare Settings.http://www.cdc.gov/ncidod/dhqp/ppe.html
  2. National Institute for Occupational Safety and Health (NIOSH) http://www.cdc.gov/niosh/topics/eye/eye-infectious.html
  3. CDC: Guideline for Isolation Precautions ;Preventing Transmission of Infections Agents in Healthcare Settings 2007.
  4. 木村哲監修、浅尾清子監訳:血液媒介病原体に対する職業上の曝露-疫学と予防方法-,JANINE JAGGER, GABRIELLA DE CARLI ,JANE L PERRY,VINCENZO PURO,GIUSEPPE IPPOLITO:OCCUPATIONAL EXPOSURE TO BLOOD - BORNE PATHOGENS:EPODEMIOLOGY AND PREVENTION, Prevention and Control of Nosocomial Infections,Fourth Edition.