1. 使い捨て注射器の針
リスク
 使い捨て注射器の針による針刺し切創事例はJES2018では全器材の24.5%(2,142/8,733件)で、JESによる全国集計が開始された2004年以降、常に最も多い原因器材となっている。
 発生場所は、「病室(30.4%)」、「手術部(17.0%)」、「廊下/ナースステーション/処置室等の病棟病室外(11.7%)」の順に多い。また、使用目的は、「経皮的注射(57.8%)」、「静脈採血(11.8%)」、「動脈採血(6.3%)」の順に多い。
 2005年に厚生労働省の通達で針刺し防止策として原則リキャップ禁止が勧告され(文献リンク)、近年鋭利器材全体でのリキャップ時の受傷割合が年々減少し、JES2018ではその割合が最も低くなった(7.0%)。しかし、使い捨て注射器の針では依然「リキャップ時(18.8%)」が最も多い発生状況であり、「器材を患者に使用中(17.4%)」を上回っている。使い捨て注射器の針は受傷した針が血液などに接触していたり、肉眼的に血液が付着していたりした事例が70.4%を占め、感染リスクの観点からも、リキャップ禁止、専用の耐貫通性廃棄容器の適切使用、安全器材の活用を基本とした予防策の遅れが懸念される器材といえる。
 使い捨て注射器の針の安全器材による針刺し切創は3.4%と低く、使い捨て注射器の針の安全器材の普及率の低さを示しているといえる。医療現場で評価し活用する選択肢として、より多くの使い捨て注射器の針の安全器材が市場に出回ることが期待される。
※JES2018:Japan EPINet Surveillance 2018(2015~2017年度、3か年データ、82施設)

対策
  • 「リキャップ」を原則として禁止し、注射針専用の廃棄容器等を適切に配置するとともに、針刺しの防止に配慮した安全器材を活用する。
  • 「経皮的注射」、「静脈採血」、「動脈採血」等について、針刺し損傷防止機構のついていない使い捨て注射器の針を用いない注射方法、採血方法に代替する。
  • 使い捨て注射器の針を用いて真空採血管/スピッツに血液を注入することは、危険を伴うため、回避する方法として真空採血セットの使用を検討する。
  • シリンジ採血で採取した血液を移し替える作業では、スピッツに注入する際に針を遮蔽する筒状の鞘のついた注射針付きシリンジの利用などを検討する。

 
/